株主リストとは?押印が必要になる書類なのか
株主総会の決議を経て登記申請を行う際、「株主リスト」の提出が必要になる場合があります。株主リストには、株主の氏名・名称や住所、保有株式数、議決権数などを記載するため、作成にあたっては正確な情報を確認することが重要です。
一方で、「株主リストには代表取締役の実印を押す必要がある?」「認印でも問題ない?」「株主全員の押印が必要?」など、押印の扱いについて疑問を持つ方も多いでしょう。
結論として、現在の株主リストは原則として押印不要です。ただし、過去の取扱いや古いひな型では押印欄が設けられていたため、現在も押印が必要だと認識しているケースがあります。
そこで本記事では、株主リストが必要になるケースや株主名簿との違い、記載する項目を整理したうえで、現在の押印ルールや作成時の注意点について詳しく解説します。
株主リストが必要になるケース
株主リストは、すべての登記申請で必要になるわけではありません。代表的なのは、登記すべき事項について株主総会または種類株主総会の決議を必要とする場合です。
たとえば、株主総会の決議を経て役員変更や商号変更、目的変更などの登記を行うケースでは、登記申請の添付書面として株主リストが必要になることがあります。
ただし、登記内容や会社の状況によって必要な書面は変わります。そのため、「株主総会を開催したから必ず株主リストが必要」と考えるのではなく、申請する登記事項ごとに確認することが重要です。
なお、1回の株主総会で複数の登記事項を決議した場合でも、対象となる株主の内容が議案間で変わらないときは、その旨を記載することで1通の株主リストで足りる場合があります。
株主リストと株主名簿の違い
株主リストと株主名簿は、どちらも株主に関する情報を記載しますが、目的と役割が異なります。株主名簿は、会社が株主を管理するために備え置く会社内部の帳簿です。
一方、株主リストは、登記申請の際に登記所へ提出する添付書面です。登記の対象となる株主総会等について、一定の株主の氏名または名称、住所、株式数、議決権数などを記載します。
法務省も、株主名簿を登記申請に添付したとしても、それだけで株主リストの提出が不要になるわけではないと説明しています。これは両者の記載内容が同一ではなく、株主リストには議決権数や議決権割合など、登記手続き上必要となる情報が含まれるためです。
したがって、株主名簿をそのまま株主リストとして扱うのではなく、株主名簿を確認したうえで、登記用の株主リストを作成するのが基本です。
株主リストに記載する主な項目
株主総会の決議を要する場合の株主リストでは、主に次のような事項を記載します。
- 株主の氏名または名称
- 株主の住所
- 保有する株式数
- 議決権数
- 議決権数の割合
- 株主総会等の開催日
- 対象となる議案
- 会社名
- 作成日
- 作成者である代表者の氏名
種類株式を発行している会社では、種類株式の種類や株式数についても、状況に応じた記載が必要です法務局の記載例では、これらの項目を記載した株主リストの様式が示されています。
株主リストに押印は必要?
株主リストを作成する際に、特に気になるのが「押印は必要なのか」という点です。以前は代表者の押印が必要とされていた時期があるため、現在も会社実印や認印を押さなければならないと考えている方もいるかもしれません。
しかし、現在の株主リストは原則として押印不要です。ここでは、現在の押印ルールに加えて、以前はなぜ押印が必要だったのか、押印なしで提出できるのか、会社実印や認印を押しても問題ないのかについて詳しく解説します。
現在は株主リストへの押印は原則不要
現在の商業・法人登記のルールでは、株主リストへの押印は不要です。法務省の「申請書、各添付書面等の押印の要否について」では、株主リストについて「押印を要しない書面」の例として明確に挙げています。根拠として商業登記規則61条3項が示されています。
つまり、株主リストに代表取締役の会社実印を押していなくても、それだけを理由として株主リストが無効になるわけではありません。
現在の様式を使って作成する場合は、まず法務局が公開している最新の書式・記載例を確認することが大切です。法務局では株主リストの書式例や記載例を公開しています。
以前は代表者の押印が必要だった
「株主リストには代表取締役の実印が必要」という情報が残っているのには理由があります。株主リスト制度が導入された当初の法務局の案内では、株主リストに代表取締役が登記所へ提出している印鑑を押印する取扱いが示されていました。その後、商業・法人登記手続きでは押印の見直しが進められ、現在の法務省の案内では株主リストは押印不要の書面として整理されています。
そのため、インターネット上にある古い記事や古いPDFを参照すると、「株主リストには代表者印が必要」と書かれている場合があります。
現在の手続きを確認する際は、古い情報ではなく、法務省・法務局が現在公開している情報を基準に判断するようにしましょう。
押印なしでも株主リストを提出できる
株主リストそのものについては、押印なしで提出できます。ここで注意したいのは、「株主リストに押印が不要」ということと、「登記申請に関するすべての書面に押印が不要」ということは別問題だという点です。
たとえば、法務省の案内では、登記申請書や委任状などについては一定の場合に押印が必要とされています。一方で、株主リストは押印不要の書面として扱われています。
したがって、登記申請全体について押印が必要かどうかを確認する際には、申請書、委任状、議事録などを個別に確認する必要があります。
株主リストに会社実印や認印を押してもよい?
株主リストは押印不要なので、押印しなければならないというルールはありません。そのため、現在の株主リストを作成する場合は、基本的には押印欄が設けられていない最新の様式を使用し、押印なしで作成すれば足ります。
一方、古いひな型に押印欄が残っているからといって、必ず会社実印を押さなければならないと判断するのは適切ではありません。特に「昔の書式を使っている」「インターネットから入手したテンプレートを使っている」という場合は注意が必要です。
押印の要否について迷ったときは、法務省・法務局が公開している最新の様式を確認しましょう。法務省も、掲載例以外の書面については管轄法務局への確認を案内しています。
株主リストの作成方法と記載する株主の範囲
株主リストを作成するときは、「どの株主を記載すればよいのか」を正しく判断することが重要です。株主全員を記載するとは限らず、株主総会の決議内容や議決権の状況によって、記載する株主の範囲が決まります。
原則として、対象となる決議について議決権を行使できる株主を基準に、議決権数の多い順から一定の範囲の株主を記載します。ここでは、株主リストを誰が作成するのか、上位10名を記載する場合や議決権割合が3分の2に達するまで記載する場合など、具体的な作成方法を解説します。
株主リストを作成するのは誰?
株主リストは、原則として登記申請人である会社の代表者が作成します。株主総会を開催した時点と、登記申請時点とで代表者が変わっている場合には、原則として登記申請時の代表者が作成することになります。
実務上は、会社の担当者や司法書士などが情報を整理して書式を作成することもありますが、株主リストの作成者を誰とするのかについては、法務省の案内に沿って確認する必要があります。
議決権数上位10名の株主を記載する場合
株主総会の決議を要する場合、株主リストでは、議決権数の割合が高い順に並べた株主のうち、一定の範囲を記載します。基準の一つが、議決権数の割合が高い上位10名です。
ただし、単純に「必ず10名だけ記載すればよい」というわけではありません。
もう一つの基準である「議決権割合を合計して3分の2に達するまで」という基準と比較して、人数の少ない方を基本として記載します。また、10位の株主と同順位の株主が複数いる場合などには、10名を超えて記載する必要が生じることがあります。法務省の記載例でも、この点について注意が示されています。
議決権割合が3分の2に達するまでの株主を記載する場合
もう一つの基準が、議決権割合を高い順に加算して、合計が3分の2に達するまでの株主を記載する方法です。たとえば、次のような株主構成だったとします。
- Aさん:40%
- Bさん:20%
- Cさん:10%
- Dさん:8%
- Eさん:5%
- その他:17%
この場合、AさんとBさんで60%、Cさんを加えると70%となるため、3分の2である66.666…%に達するためにCさんまでを記載することになります。
ただし、実際の計算では、単純な保有株式数ではなく、対象となる決議について議決権を行使できる議決権数を基準にする点に注意が必要です。
法務省の記載例では、上位10名と3分の2に達するまでの株主の人数を比較し、少ない方の人数を基本として記載する仕組みが示されています。
株主リストに記載する項目
株主リストには、対象となる株主について、主に以下の情報を正確に記載します。
- 氏名・名称:個人株主の場合は氏名、法人株主の場合は法人名を記載します。
- 住所:個人株主の場合は住所、法人株主の場合は原則として本店所在地を記載します。
- 株式数:対象となる株主が保有している株式数を記載します。
- 議決権数:対象となる株主総会の決議について、その株主が行使できる議決権の数を記載します。
- 議決権割合:総議決権数に対する、その株主の議決権数の割合を記載します。
- 株主総会の開催年月日:株主リストの基準となる株主総会の開催日を記載します。
- 対象となる議案:登記の対象となる決議事項など、株主リストを作成する対象の議案を記載します。
なお、外国人や外国法人が株主となっている場合は、株主名簿に記載されている氏名・名称や住所などを確認したうえで、適切に記載する必要があります。また、種類株式を発行している会社では注意が必要です。種類によって議決権の有無や内容が異なる場合があるため、株式の種類や株式数、議決権数などを確認し、株主リストに正しく反映しましょう。
株主リストを作成する際は、株主名簿だけでなく、株主総会の議事内容や定款なども確認し、記載内容に誤りがないか照合することが大切です。
株主リストを作成するときの注意点
株主リストは、株主名簿の情報をそのまま転記すれば完成するものではありません。記載する株主の範囲や議決権数、議決権割合などを正しく確認したうえで作成する必要があります。特に、「誰を記載するのか」「議決権をいくつ持っているのか」「どの株主総会・議案を対象とするのか」を間違えると、株主リストの修正が必要になる場合があります。
ここでは、株主リストを作成する際に確認しておきたいポイントを、株主名簿との照合方法や議決権数の計算、株主総会の決議内容との確認などに分けて解説します。
株主名簿と記載内容を照合する
まず確認したいのが、株主名簿との照合です。株主リストを作成するときは、次のような項目を株主名簿と突き合わせましょう。
- 株主の氏名・名称
- 住所
- 保有株式数
- 株式の種類
- 株主の異動状況
- 基準日との関係
特に、株式譲渡や相続、増資などがあった直後は、株主構成が以前の資料から変わっている可能性があります。なお、株主名簿を登記申請に添付したとしても、株主リストの代わりになるわけではありません。法務省も両者は別の書面として扱っています。
株式数や議決権数の計算を間違えない
株主リストでは、株式数だけでなく議決権数を記載します。そのため、「株式を何株持っているか」と「その議案について何個の議決権を持っているか」は分けて確認することが重要です。
たとえば、自己株式など、当該決議について議決権を行使できない株式は、議決権数の計算から除外する必要があります。法務省も、自己株式など議決権を有しない株式の株主は、株主リストの対象から除かれる旨を説明しています。
種類株式を発行している会社では、議決権の有無や内容が株式の種類によって異なる場合もあるため、定款や株主名簿などを確認して計算する必要があります。
株主総会の決議内容と照らし合わせる
株主リストは、株主総会の議案と切り離して考えることができません。たとえば、一つの株主総会で複数の議案を決議し、それぞれの議案によって議決権を行使できる株主や議決権数が変わる場合、議案ごとに株主リストを確認する必要があります。
法務省も、原則として登記すべき事項ごとに株主リストを作成する必要があるとしつつ、各議案を通じて記載内容が変わらない場合には、1通にまとめられる場合があるとしています。したがって、作成時には、「この株主リストは、どの株主総会の、どの議案について作成しているのか」
を明確にしておくとミスを防ぎやすくなります。
最新の様式・記載例を確認する
株主リストの作成では、古いテンプレートをそのまま使わないことも重要です。押印の扱いをはじめ、登記手続きでは制度変更が行われることがあります。法務省・法務局は現在の株主リストの書式例や記載例を公開しているため、作成時には最新情報を確認するのがおすすめです。
特に検索エンジンから見つけたWordやPDFのテンプレートには、過去の押印欄が残っているケースがあります。「押印欄があるから押印が必要」と判断するのではなく、現在の法務省・法務局の案内と照らし合わせるようにしましょう。
株主リストの押印についてよくある質問
株主リストの押印については、「代表取締役の実印が必要なのか」「認印でもよいのか」「株主全員の押印が必要なのか」など、さまざまな疑問が生じやすいところです。現在、株主リストは原則として押印不要ですが、古い書式や過去の情報を見て、押印が必要だと考えている方もいるかもしれません。
ここでは、株主リストの押印に関して特に多い疑問を取り上げ、現在のルールに沿ってわかりやすく解説します。
株主リストに代表取締役の実印は必要?
現在の株主リストには、原則として代表取締役の実印は必要ありません。
法務省は株主リストを「押印を要しない書面」の例として明示しています。
ただし、株主リスト以外の登記申請書や委任状などには、別途押印が必要となる場合があります。そのため、「登記申請に実印が一切必要ない」という意味ではありません。株主リストそのものの押印が不要という点を押さえておきましょう。
株主リストに認印を押す必要はある?
現在の株主リストには、原則として代表取締役の実印は必要ありません。
法務省は株主リストを「押印を要しない書面」の例として明示しています。ただし、株主リスト以外の登記申請書や委任状などには、別途押印が必要となる場合があります。
そのため、「登記申請に実印が一切必要ない」という意味ではありません。株主リストそのものの押印が不要という点を押さえておきましょう。
株主全員の押印は必要?
株主全員の押印は必要ありません。
そもそも株主リスト自体が押印不要であり、株主全員から印鑑をもらうことを求める書面ではありません。また、株主リストに記載する株主についても、実際に株主総会へ出席して議決権を行使した株主だけが対象となるわけではありません。
対象となる決議について議決権を行使することが可能だった株主の中から、定められた基準に従って記載します。欠席した株主や、出席しても議決権を行使しなかった株主も対象となり得ます。
押印欄がある古いひな型はどうすればいい?
古いひな型を使用している場合は、まず最新の様式に差し替えることをおすすめします。
過去には株主リストに代表取締役の登記所提出印を押印する取扱いが案内されていたため、古い書式に押印欄が残っていることがあります。
一方、現在の法務省の案内では株主リストは押印不要です。したがって、古いテンプレートを見て「現在も実印が必要」と判断するのではなく、法務局が公開している最新の株主リストの書式例・記載例を利用すると安心です。
まとめ|株主リストは原則として押印不要
株主リストは、一定の登記申請を行う際に提出する重要な添付書面です。現在のルールでは、株主リストへの押印は原則として不要であり、代表取締役の会社実印や認印、株主全員の押印も必要ありません。
株主リストを作成するときは、押印の有無だけでなく、記載内容にも注意しましょう。対象となる株主の範囲を確認し、株式数だけでなく議決権数や議決権割合も正確に記載することが大切です。また、株主名簿や株主総会の議案と照合し、氏名・名称、住所、株式数などに誤りがないか確認しましょう。
過去には代表者の押印が必要とされていたため、現在も実印が必要だと誤解されることがあります。しかし、現在の法務省の案内では、株主リストは押印を要しない書面とされています。ただし、株主リストが押印不要だからといって、登記申請に関するすべての書類で押印が不要になるわけではありません。申請書や委任状など、ほかの書類については個別に確認する必要があります。
実際に株主リストを作成する際は、古いひな型ではなく、最新の法務省・法務局の様式や記載例を確認することをおすすめします。

